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般若心経の空とはなにか

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私の般若心経の解釈について その6

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私の般若心経の解釈について その6

 今回は十二支縁起に続く四諦について書きます。
 四諦は四聖諦とか四諦の法門とも云われ四つの真理と云う意味です。十二支縁起の項の冒頭でも述べたようにこの真理そのものはお釈迦さまが悟りを得た後の初めての説法、初転法輪でもあります。

 苦集滅道、つまり苦諦、集諦、滅諦、道諦は生存の真相である苦(苦の真理)、苦の原因は苦の原因となる条件を集める事にあるとする集(集の真理)、苦を滅するのは苦の原因となるものを滅する事(滅の真理)、ここに苦の原因を滅する道があるとする道(道の真理)を示すものです。

 古代インドではバラモン思想により実在して未来永劫、流転する我「アートマン」が説かれておりました。アートマンは悪行により闇の世界に落ち、善行により天界に生れるとされた。そしてたとえ天界に生まれて美しい花園、華やかな音楽と舞、贅をつくした食物と酒を楽しみ幸せな時を過ごしても、それは一時的なもので、善行の果報を享受し尽くすと再びこの世に戻るのです。
 こうして転生する生存は楽しみ喜びもあるが苦しみも多い。王侯貴族などの支配階級に生まれるか貧しい農夫に生まれるかで、その貧窮や苦しみに大きな違いが出てきます。そこで苦しみや悩みの少ない階級に転生するために善行に励まなければならないことになります。
 しかし、どんな善徳を積んでも時がおとずれ、善悪、徳不徳が計られて最後の審判により、苦しみの輪廻を終えられることがありません。人々を深い苦しみと悩みから救い出す神が存在するわけでもないのです。このようにこの時代のインド人にとって輪廻は無限の不安の種であり、何よりも現実の苦悩でありました。
 そこにお釈迦さまが現れて、苦集滅道を説かれた訳で、当時の人々にとって革命的救世主のような存在であったのです。

 ところで般若心経ではこの四諦について「無苦集滅道」と否定しております。これはお釈迦さまの初転法輪、当時のインド人が何よりも渇望していた、輪廻から脱出、解脱を否定しているのでしょうか。
 それは違います。

 この項は「表題、その4(4月24日掲載)の(3)二節 是故空中~について」の続きで、次の通りです。

     是故空中   無 五薀
            無 六根
            無 六境
            無 六識
            無 十二支縁起、亦無十二支縁起尽
            無 四諦

 ここでこの四諦は、その前の説一切有部の実在説と同様で、実在説を前提とした論理に変えられております。

 説一切有部では、これ迄述べてきたように、苦と苦の原因となる存在の要素は(五位七十五法)、実在する七十五種の構成要素の産物なのです。実在するものを滅するというのはどう云う事なのでしょうか。もしなんらかの意味があるとすれば、構成要素の組み合わせの変化により他の存在の要素に変化するというだけです。又、説一切有部は道諦について部派仏教(小乗仏教)が伝統的に教義として構築してきた八正道をかかげます。八正道とは八つの支分からなる聖なる道の意味で、苦の滅(滅諦)に導く八つの正しい実践徳目とされます。

 正見(正しい見方、見解)、正思性(正しいものの考え方)、正語(正しい言葉)、正業(正しい行い)、正命(正しい生活)、正精進(正しい努力)、正念(正しい思念)、正定(正しい瞑想)で、道諦の内容を構成するもので、部派仏教の修行者が必ず守らねばならない徳目とされました。瞑想が最終的な徳目で他の7つの支分は瞑想を十分に行うための予備的な段階とされます。八正道は後に大乗仏教の修行徳目とされた六波羅蜜に比べて道徳的色彩をもち、穏便で理性的かつ合理的な特徴をもつものでした。

 しかし八正道の目指すものはお釈迦さまの悟りでないのです。部派仏教の最高の聖者、阿羅漢です。だから八正道の最終徳目の瞑想は阿羅漢を目指すもので、般若波羅蜜多(智慧の完成)を得るための瞑想でないのです。

 だから、般若心経では、この八正道を最終徳目とする四諦「無」と否定しているのです。

 さて(3)承 二節 是故空中~、の項が、その4から今回その6で終わります。部派仏教が仏教哲学として築いてきた実在を前提とする主要な教義を、説一切有部が完全な実在説で理論化したものを、この項では般若心経の作者である神秘的修行者は逐一否定している訳です。

 さて、ここで趣きを変えて、次の(4)転 一節 無智亦無得~に続きます。
 (4)は次回掲載します。

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