忍者ブログ

般若心経の空とはなにか

ブログ

私の般若心経の解釈について その2

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

私の般若心経の解釈について その2

 お釈迦さまは6年間の修行の末に「悟り」を得られました。悟りとはこの世の一切、物質世界や人間や人間社会、宇宙天体を含む天然自然をも含む一切を貫徹する、唯一にして絶対的真理への目覚めです。

 真理とは「縁起の法」と云われるものです。これは、この世には常在不変の実体(有)はなく、夢まぼろしの如き虚無(無)でもなく、全ては複数の事物の相互依存関係の中で生成消滅を永久に繰り返すだけ、という理法です。

 もし物事に常在不滅の実体があるとしたらどんな事が予想されるでしょうか。ここでは人間や人間社会について考えましょう。富める条件を持つ人は未来永劫富める人で、貧しい条件を持つ人は未来永劫貧しく輪廻転生を繰り返す事になります。才能ある人と才能のない人、権力にめぐまれた人と権力に縁遠い人、犯罪や悲惨さにその加害者又は被害者として常にかかわりのある人とない人が、それぞれの固定された境遇(実在する条件)の中にとじ込められたとしたら、この世に救いがあるでしょうか?

 お釈迦さまは身をもってその事を否定されました。お釈迦さまにも厚い積善の徳と共に、無数の悪徳の人生があったのです。そんな自らを自覚するので「私は多くの先人によって切り開かれながらも、深い草木におおわれた、真理の王城に至る小道を発見した」と云う、求道者としての説話を残されているのです。

 お釈迦さまは悟りを得てから、その真理と、真理に至る修行方法(般若波羅密多の瞑想、つまり智慧の完成を得る瞑想)、真理にかなった生き方について終生、お説きになりました。
 お釈迦さまが入滅されると、教えを正しく記憶し散逸を防ぐための「結集」が行われました。結集とはお釈迦さまの教えを弟子達が誦して互いの記憶を確認しながら、合議の上で経典を編集する集会です。結集は入滅されてから百年後、二百年後と開かれたが、全て口伝で、常に経典の冒頭が「如是我聞」であったため、お釈迦さま入滅されて100年、200年、500年後に、新たに編集された経典も全て如是我聞として伝えられた。

 お釈迦さま入滅されて百年経つと教団は分裂し、その後も分裂を重ねて四百年後には二十教団までになっていました。この中で最大の勢力をもったのが「説一切有部」という教団でした。説一切有部とは「すべてはある」の意味で、実在を説く教団です。
 お釈迦さまは「涅槃の実在」を説かれたとして、その事を手がかりに入滅後、四百年間に渡って伝えられ、バラモンの論理を取り入れつつ理論化され、精緻化されてきた教え(アビダルマ、仏教哲学)を、実在説に再構成し理論化してしまったのです。この教団が仏教の最大勢力となり教理を支配するようになってしまいました。

 しかし紀元前後、お釈迦さま入滅されて五百年後になると説一切有部の実在説に異議をとなえてこれを否定し、お釈迦さまの真意でないと主張する修行者が出てきます。彼等はお釈迦さまの修行法、「智慧の完成を得る瞑想」(般若波羅密多)の中で、実在説とは真理から遠く離れた妄想であり、お釈迦さまの悟りや、その教えと全く異なる事をありありと見ていたのです。彼等は瞑想の中で見たもの、知った事を般若経として残しました。これが大乗仏教運動のはじまりとなりました。

 そして、それから百年から二百年後出現した龍樹は般若経の中の教説に論理を与え、そこで実在説に傾いた仏教の教理をお釈迦さまの真意に引き戻したのです。
 つまり龍樹は「縁起の法とは空である」と説き、数々の経典を残したのです。

 その後、空の理法に基づく大乗経典が数多く現れ、大乗仏教運動の中でお釈迦さまの真意が埋没しそうになった時、時代と歴史の荒波に翻弄されても、その真理が決して消失する事のない仕組みを考える修行者がおりました。その天才的で神秘的修行者こそ、般若心経を書き残したのです。

 この修行者は何を考えたでしょうか。お釈迦さまが真理に目覚めてから、その真理がその後、約八百年にも渡り揺籃した歴史をつぶさに省みて、その全歴史をおり込んで揺るぎない真理の灯台をうち立てようとしたのです。

 それが般若心経なのです。

 次回、その修行者の思考の軌跡を辿ってみます。

拍手[0回]

PR

コメント

プロフィール

HN:
武田紀久雄
性別:
男性

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

カテゴリー

ブックマーク

個人的ブックマーク
中村醸造元

最新CM

最新TB

バーコード

ブログ内検索

P R