NHKテレビテキスト「100分de名著」般若心経より抜粋 その1
著者、花園大学教授 佐々木 閑
以下、私が気になる部分は次の通りです。
[同書 P5より]
「般若心経」がどのような位置づけになるかというと、「日本でもっとも人気あるお経」ということが言えるでしょう。もちろんお隣の韓国や中国でも人気はあるのですが、特に日本での人気はものすごいものだと思います。しかしその一方でタイやスリランカのような「上座部仏教」(古い姿の仏教をそのまま守っている国々)では、人気がありません。人気がないどころかほとんど誰も知らないのです。
「私のコメント」
仏教にはその伝達の経路の違いにより「南伝仏教」と「北伝仏教」があります。
仏教教団はお釈迦さま入滅されてから約100年後に分裂した。伝統を重視する上座部と、教理の解釈や戒律の運用に進歩的で自由な気風の大衆部です。この分裂を根本分裂という。
丁度この分裂の前後に、仏教の守護者であったアショーカ王の子マヒンダが、スリランカに上座部仏教を伝えた。これがその後東南アジアに広まった南伝仏教です。
お釈迦さま入滅して800年後に成立した般若心経を知らないのは当然な訳です。
なお、北伝仏教はお釈迦さまが入滅して約500年後に中央アジアを経て中国に伝えられた仏教です。
般若心経誕生までの仏教史の流れについて、私のHPの冒頭の方に一覧表で示してあります。この表はHPに掲載された私の般若心経解説のまとめでもあります。この表の要点は最下段の論点にあります。
お釈迦さまの教えは「実在の否定」でした。それが「実在の肯定」、「実在の否定」、「実在の肯定」(唯識派は実在の肯定と私は考えます)、そして「実在の否定」のため般若心経が書かれた、と私は考えたものです。